電子カルテを導入済みのクリニックでも、バックアップ未整備・端末セキュリティ不足により、サイバー攻撃で診療停止に追い込まれるケースが報告されています。この補助金はそのリスクに対処するための資金を支援します。
補助金の概要
医療機関診療情報サイバーセキュリティ対策支援事業は、電子カルテを導入済みの東京都内医療機関が、サイバーセキュリティ対策に必要な機器・ソフトウェアの導入費用の一部を東京都が補助する制度です。
主にバックアップ機器・EDR(Endpoint Detection and Response)・リモートアクセス対策・端末セキュリティなどが補助の対象となります。電子カルテを守るためのセキュリティ基盤を整備する際に活用できます。
電子カルテを未導入で、まず導入を検討している場合は診療所診療情報デジタル推進事業をご確認ください。
対象となる医療機関
この補助金は、電子カルテを導入済みであることが前提条件になります。
- 東京都内に所在する医療機関
- 保険医療機関の指定を受けていること
- 電子カルテを導入済みであること(未導入は対象外)
- 無床診療所・有床診療所・200床未満の病院(施設種別は公募要項で確認)
- 過去に同制度を重複申請していないこと
重要:電子カルテが未導入のクリニックは対象外です。まず診療所診療情報デジタル推進事業で電子カルテを導入した後、本制度を活用するのがスムーズです。
対象となるシステム・経費
電子カルテデータを守るための以下のシステム・機器が主な対象となります。
具体的な対象費用
- バックアップ機器(NAS・外付けHDD)の購入費:電子カルテデータの定期自動バックアップ環境の整備
- クラウドバックアップサービスの導入費:オンサイト・オフサイト二重化のためのクラウド活用
- EDRソフトウェアのライセンス費:各端末へのEDR導入費用(初年度ライセンス等)
- VPN機器・多要素認証ツールの導入費:リモートアクセス時の認証強化
- UTM(統合脅威管理)機器の購入費:院内ネットワーク全体の入口対策
- 脆弱性診断費用:院内ネットワーク・電子カルテシステムの脆弱性を専門家が診断する費用
- セキュリティ研修・教育費:スタッフへの情報セキュリティ教育(対象範囲は要確認)
対象外になりやすい費用
- 電子カルテ本体の購入費:別制度(診療所診療情報デジタル推進事業)の対象
- 電子カルテを未導入の状態でのセキュリティ対策:本制度は導入済み前提
- 汎用パソコン・スマートフォンの購入:セキュリティ目的として明確に区分できない場合
- 月額利用料・保守契約の継続費用:導入時の初期費用が対象で、継続的なランニングコストは対象外となる場合が多い
- 補助金交付決定前の発注・支払い済みの費用
- 院内スタッフの人件費・残業代
補助率・上限額
最新の補助率・上限額・公募時期は以下の公式ページをご確認ください。
なぜクリニックのサイバーセキュリティ対策が重要か
医療機関は患者の個人情報・診療記録という極めて機密性の高いデータを扱います。サイバー攻撃によるデータ漏洩・暗号化は、診療停止・患者への信頼失墜・法的責任に直結します。
ランサムウェア被害の実例
国内外の医療機関でランサムウェア被害が相次いでいます。被害発生後は以下のような深刻な影響が報告されています。
院内サーバーがランサムウェアに感染し、電子カルテが数週間にわたって使用不能に。紙での診療に切り替えを余儀なくされ、診療効率が大幅に低下。
数千人分の患者データが暗号化され、復号のために高額な身代金を要求された。バックアップ未整備のため、データ復旧に数ヶ月を要した。
古いVPN機器の脆弱性を悪用した攻撃者が院内ネットワークに侵入。電子カルテサーバーへのアクセスに成功し、データを窃取された。
医療機関が狙われやすい理由
- 患者データの価値が高い:健康情報は闇市場で高値で取引される
- 診療停止のリスクが大きく、身代金を支払いやすいと攻撃者に認識されている
- セキュリティ人材が不足しがち:IT専任担当者を置くクリニックは少ない
- 古い機器・OSの使用:医療機器との互換性維持のためにアップデートが遅れやすい
- 外部からのリモートアクセスが多い:医師・スタッフの在宅勤務・電子処方箋連携等でVPN利用が増加
この補助金が向いているクリニック
- 電子カルテは導入済みだが、バックアップが整備されていないクリニック
- ウイルス対策ソフトだけでセキュリティ対策をしている状態で、EDRへの移行を検討しているケース
- スタッフが自宅や出先から電子カルテにアクセスしており、VPN・多要素認証を整備したいクリニック
- 医療機器との接続もあり、院内ネットワーク全体のセキュリティを見直したい場合
- 近隣や同規模の医療機関でサイバー被害が起きており、緊急度を感じている院長先生
- TAI-SECのような医療機関専門のセキュリティ事業者と連携してセキュリティ対策を進めたいクリニック