オンライン診療を導入したい、あるいは遠隔で画像診断・病理診断を行う体制を整えたい——そうした医療機関にとって、東京都の遠隔医療設備整備事業は見逃せない補助金制度です。ただし申請前に保険診療として実施するか否かなど、重要な確認事項があります。
本記事では補助対象となる遠隔医療の種類から対象経費、申請前の注意点まで詳しく解説します。
補助金の概要
遠隔医療設備整備事業は、東京都が医療機関の遠隔医療実施体制の構築を支援するための補助金制度です。オンライン診療・遠隔画像診断・遠隔病理診断・遠隔手術指導など、多様な遠隔医療の形態に対応した設備整備費用を補助します。
新型コロナウイルス対応を経て普及が加速したオンライン診療ですが、カメラ・通信機器・専用システムなどの初期投資が課題となるクリニックも少なくありません。本事業はそうした設備投資の負担を軽減することを目的としています。
対象となる医療機関
東京都内に所在する保険医療機関で、遠隔医療を実施または実施予定の医療機関が対象です。
- 東京都内の診療所(無床・有床)
- 東京都内の病院
- 遠隔医療を実施する予定がある(計画段階でも申請可能なケースあり)
対象となる遠隔医療の種類
本事業で対象となりやすい遠隔医療の形態は以下の4種類です。
患者が自宅・職場等からビデオ通話で受診する保険診療。初診・再診ともに要件あり。
CT・MRI等の医用画像を遠隔地の専門医が読影・診断するシステム。
病理標本の画像を遠隔地の病理専門医が診断。地域の病理診断体制強化に寄与。
手術室の映像を遠隔地の専門医が確認しリアルタイムで指導・支援を行う形態。
対象となる設備・経費
本事業で補助対象になりやすい設備・経費の例は以下の通りです。
| 経費区分 | 具体例 |
|---|---|
| オンライン診療システム費 | オンライン診療プラットフォームの導入費・初年度ライセンス費、保険請求連携機能の設定費 |
| 遠隔画像診断設備費 | PACS(画像保管通信システム)の遠隔接続機能追加費、医用画像ビューワの導入費 |
| 遠隔病理診断設備費 | バーチャルスライドシステム(全スライドデジタル化)の導入費 |
| 通信機器・カメラ費 | 診察用高解像度Webカメラ、医療用マイク、安定した通信環境構築費 |
| セキュリティ対策費 | 患者情報の安全な通信のための暗号化対策費(遠隔医療に付随するもの) |
申請前に確認すべき重要事項
申請前に以下の事項を確認してください。
- オンライン診療を保険診療として実施する(または実施予定の)計画があるか
- 厚生労働省のオンライン診療の指針に準拠した運用が可能か
- 使用予定のオンライン診療システムが医療機関向けの適切なセキュリティ要件を満たしているか
- 遠隔画像診断・遠隔病理診断の場合、読影・診断を行う遠隔側の専門医との契約・連携体制が整っているか(または整える計画があるか)
- 補助対象設備の保存・管理期間の要件を満たせるか
対象外になりやすいケース
- 自由診療のみのオンライン診療(美容・スポーツ医学など保険外のオンライン相談・指導)
- 電子カルテシステム本体の導入費(遠隔医療に付随しない場合は別制度を確認)
- 院内LANやWi-Fi環境の一般的な整備費(遠隔医療専用でない場合は対象外になりやすい)
- 既に補助金を受けて整備した設備の更新・買い替え(重複申請不可)
- 遠隔医療と直接関係のないハードウェア(通常業務用PC等)
- 建物・内装の改修工事費(通信機器設置のための軽微な工事を除く)
補助率・上限額
補助率・上限額・申請受付期間は公募ごとに変更されます。また遠隔医療の種類(オンライン診療・遠隔画像診断等)によって補助の条件が異なる場合があります。必ず最新の公募要項でご確認ください。
一般的に設備整備系の補助金では、補助率1/2〜2/3、上限数百万円規模の設定が多いです。ただし最新公募の条件は必ず公式情報でご確認ください。早期に申請準備を整えておくことで、公募開始後すぐに申請できる体制が作れます。
この補助金が向いているクリニック
- 患者の通院負担を減らすため、定期処方・慢性疾患管理のオンライン診療を保険診療として開始したいクリニック
- 放射線科専門医が常駐していないが、CT・MRI等の読影体制を強化したい診療所・病院
- 地域の病理診断体制の空白を補うため、遠隔病理診断の設備整備を計画している中小病院
- 高齢・障害・育児中などの通院困難患者が多く、オンライン診療で患者利便性を高めたいクリニック
- 複数拠点展開・分院展開を計画しており、本院からの遠隔指導・連携体制を構築したい医療法人